「あのアトラクション、いったいどれくらいお金がかかっているの?」──そんな素朴な疑問を持ったことはありませんか。
ディズニーのアトラクションは、単なる“乗り物”ではなく、建築・演出・安全技術・音楽・照明までを統合した“体験型建築物”です。
そのため、ひとつのアトラクションに数百億円という莫大な工事費が投じられることも珍しくありません。
この記事では、公式発表や信頼性の高い報道・資料をもとに、ディズニーのアトラクション総工事費用ランキングTOP5を紹介します。
そして単に金額を並べるだけでなく、「なぜその金額が必要だったのか」「私たちはその投資の成果をどう感じているのか」という構造的な視点から解説していきます。
まずは第5位──スプラッシュ・マウンテンから見ていきましょう。
第1章:5位 スプラッシュ・マウンテン ― 280億円の笑顔と悲鳴の滝
1992年10月1日、東京ディズニーランドに新エリア「クリッターカントリー」とともに誕生したのが、スプラッシュ・マウンテンです。
丸太型のボートに乗り込み、南部の歌の世界をめぐるこのアトラクションは、最後に16メートルの滝つぼへダイブするという劇的なクライマックスを迎えます。
その建設費用は周辺エリアを含めて約280億円とも言われ、当時のディズニーランドでは最大級のプロジェクトでした。
● 建築費の大半を占めた“水のための設計”
スプラッシュ・マウンテンは、アトラクションの約7割が見えない場所──つまり“山の内部”に隠れています。
そこにはボートを滑らせるための巨大な水路、数十台のポンプ設備、そして常に一定の水量を保つための循環システムが組み込まれています。
この「水を動かすための構造コスト」こそが、工事費を押し上げた最大の要因でした。
水が流れ続けるためには、地形と重力のバランスを1mm単位で調整する必要があり、土木技術者・建築家・アニメーターが一体となって設計を行っています。
● 南部の歌の世界を支える“演出費”
内部には、うさぎどんやキツネどんなど約100体以上のアニマトロニクスが配置されており、それぞれが異なる動きを見せます。
これらの動きを実現するために、油圧制御システムや同期音響設備が導入され、まるで物語の中を漂うような没入感を作り出しています。
特に「ジッピーディー・ドゥー・ダー」の合唱シーンでは、音響の反響計算まで設計段階から織り込み済み。
これは、費用が“豪華さ”ではなく“感情の連動”に使われている好例といえます。
● 安全性と体験の両立 ― 「子連れでも楽しめる滝」設計
スプラッシュ・マウンテンは“絶叫系”と呼ばれながらも、子どもが笑顔で乗れるレベル設計が特徴です。
落下の角度や体感G(重力加速度)は厳密に計算され、身長制限(90cm以上)をクリアすれば、未就学児でも安全に体験できます。
つまりこの280億円は、単なるスリルではなく、「家族全員で共有できる“ちょうどいいドキドキ”」を形にした金額なのです。
● リニューアルに向けて ― 新テーマ化への準備
現在、東京ディズニーランドでは「スプラッシュ・マウンテン」のリニューアル計画が進行中です。
テーマは『ティアナと魔法のキス』をもとにした新アトラクションとして、2020年代後半に刷新予定。
この変更によって、既存の水系構造を活かしつつ新たな演出設備が導入される見込みで、再び数百億円規模の投資が行われる可能性があります。
ディズニーは古いものを壊すのではなく、「過去の投資を未来へ引き継ぐ」設計思想を持っており、それが長年愛される理由にもつながっています。
スプラッシュ・マウンテンの280億円は、ただの数字ではありません。
そこには「家族全員が同じ瞬間を笑顔で迎えるための設計費」としての価値が込められています。
続く第2章では、まだベールに包まれたシュガー・ラッシュ(仮称)の最新情報を見ていきます。
第2章:4位 シュガー・ラッシュ(仮称) ― 未知の29○億円、次世代型シューティング
2026年度以降、トゥモローランドに新しく登場すると噂されているのが、「シュガー・ラッシュ(仮称)」です。
現時点では正式名称も工事費も発表されていませんが、各種報道や設計関係者の情報によると、総投資額はおよそ290億円規模に達すると見られています。
2人乗りのシューティング型アトラクションとして開発が進められており、ゲーム世界に入り込むような体験を目指していると言われます。
● トゥモローランド再編の中核を担う新施設
トゥモローランドは、1970年代のオープン当初から「未来」をテーマにしたエリアでしたが、近年はテクノロジーの急速な進化により“未来”の定義が変化しています。
ディズニーはその変化を踏まえ、2020年代後半に向けてエリア全体を再構築中です。
その中心となるのが、この新アトラクション「シュガー・ラッシュ」。映画『シュガー・ラッシュ』(2012年)および続編『シュガー・ラッシュ:オンライン』(2018年)を原作とし、ゲームの世界を舞台にした冒険型ライドになると見られます。
従来の“映像を見る”型から、プレイヤーが「参加する」型へ──。
その構造変化こそが、投資額を押し上げている最大の理由です。
● 最新ライドシステムと双方向体験の融合
開発に用いられるのは、トロン・ライトサイクル・ランやトイ・ストーリー・マニアで採用された“トラックレス移動+プロジェクション連動”型ライドシステムと推測されます。
この方式は、床下に磁気誘導やGPSを組み込み、レールを使わずにライドを移動させる仕組みです。
自由度が高く、ルートをランダムに変更できるため、体験の再現性が低くなり、「毎回違う物語を体験できる」というメリットがあります。
ただしこのシステムは、従来の固定レール型に比べて設置・制御コストが数倍に膨らむとされ、電源供給・通信制御・センサー精度のすべてが最新規格で統一される必要があります。
● “親子2人乗り”という体験設計
報道で「2人乗り」というキーワードが出ている点は、非常に重要です。
これは単なる設計上の制約ではなく、親子で協力して操作することを前提にした体験設計である可能性が高いと考えられます。
ゲームの世界を舞台にしながら、片方が「運転」、もう片方が「シューティング」を担当するような形式であれば、家族の中での役割分担が自然に生まれます。
この「一緒にクリアする」体験は、従来の“同乗”とは異なり、心理的な一体感を強く生む効果があります。
● 巨額投資が示す“デジタル体験”への転換点
アトラクション開発の方向性として、ディズニーは近年「インタラクティブ化」に大きく舵を切っています。
その背景には、Z世代以降の来園者が“受け身の映像体験”では満足しなくなっているという現実があります。
自分がキャラクターを動かし、得点を競い、ストーリーに干渉できる。
この“参加型の魔法”こそが、シュガー・ラッシュ開発に数百億円を投じる理由です。
● 子連れディズニーにおける“未来型アトラクション”の価値
親子で協力する体験がメインになると、小さな子どもでも「自分も頑張った」という感覚を得られます。
これまでの絶叫型とは違い、「成功体験としてのアトラクション」が誕生する可能性があるのです。
私たち家族も、次に東京ディズニーランドを訪れるとき、この新アトラクションを“親子の共闘ステージ”として体験したいと思います。
未知の29○億円が、どんな笑顔を生み出すのか──完成が待ち遠しいですね。
続いて第3章では、2020年に登場した大作アトラクション、美女と野獣“魔法のものがたり”の320億円の世界をひも解きます。
第3章:3位 美女と野獣“魔法のものがたり” ― 約320億円の没入演出が生まれた理由
2020年9月28日、東京ディズニーランドに誕生した「美女と野獣“魔法のものがたり”」。
映画そのものの世界に入り込み、ベルと野獣の物語を追体験できるこのアトラクションは、開業直後から「まるで映画の中を歩いているよう」と話題を呼びました。
その制作費は、周辺の新ファンタジーランド全体で約750億円、そのうちアトラクション単体では約320億円規模に上るといわれています。
なぜ、ここまでの金額が必要だったのでしょうか。その答えは、「魔法の再現」を“構造”で実現しようとした点にあります。
● 巨大ドーム構造が生み出す“包まれる体験”
このアトラクションの特徴は、巨大なドーム型の建築構造です。
内部は直径約30メートル、高さ約20メートルにおよぶ空間で、ライドはその中をリニアモーター駆動で滑らかに移動します。
つまり、レールではなく磁力で動く“トラックレスライド”。この仕組みにより、乗るたびに異なる角度や位置から物語を体験できます。
これは単なる技術的な工夫ではなく、観客を「演出の一部」にするための構造設計です。
まるでベルとともにダンスホールを歩くように、ライドが自然に回転し、キャラクターの視線や音楽の方向と完全に同期する仕掛けが施されています。
● アニメーションと物理空間の“同期演出”
最大の見どころは、映画の名シーン「美女と野獣」の舞踏シーン。
CGではなく、実際の空間と照明、プロジェクションマッピング、そして可動式アニマトロニクスが同時に動くことで、“現実のダンスホール”を作り出しています。
特に注目すべきは、照明と音楽の同期精度。0.01秒単位でライドの動きに合わせて音が流れるよう調整されており、観客は「視覚」「聴覚」「身体感覚」をすべて包み込まれます。
これこそが、320億円という金額の正体──“映像技術と建築を融合させるための設計費”なのです。
● 「ベルの村」まで含めた空間体験の完成度
このアトラクションの価値は、乗り物部分だけにとどまりません。
周辺の「ベルの村」エリア全体が、映画の舞台をそのまま再現しています。
屋根瓦の色、街灯の配置、壁のひび割れまで統一されたデザインで、1本のアトラクションを“村ごと物語にする”発想が徹底されています。
まさに、空間まるごとがひとつのストーリーテリング装置として機能しているのです。
この範囲の広さが、結果的に320億円という規模につながりました。
● 「感動の理由」は“動かない瞬間”にある
筆者が初めてこのアトラクションを体験したとき、印象に残ったのは、派手なシーンではなく、静かにベルが本を読むシーンでした。
照明が柔らかく落ち、風の音がわずかに流れる。ライドは数秒止まり、観客に「間」を与えます。
その静寂の中で、「この場所のすべてが、物語を語るために設計されている」と気づかされるのです。
この“静かな時間”を作るために、演出装置は動かずとも維持・制御されています。そこにも、目に見えない運用コストと設計思想が存在します。
● 家族で体験した「魔法の構造」
わが家では、小学生の子どもと一緒に体験しました。
「ベルになりたい」と言っていた娘が、ライドが回転して鏡の前に映る自分を見た瞬間、本当に自分が物語の中にいるような表情をしていたのを覚えています。
それを見たとき、320億円という数字が単なるコストではなく、「子どもが夢を現実に変えるための装置」だと感じました。
このアトラクションの“魔法”とは、技術や演出の完成度だけでなく、体験者の記憶の中に残る“物語の余韻”をデザインしている点にあります。
● 320億円の投資が生んだ“再訪の理由”
一度体験しただけでは気づけない細部が多く、次回訪れる際には「今度は別の角度から見たい」「もう一度あの瞬間を感じたい」と思わせます。
これは、ディズニーが意図的に設計している“再訪構造”のひとつです。
つまり、320億円という金額は「一度きりの感動」ではなく、「何度でも戻ってきたくなる感情の仕掛け」に投じられています。
次の第4章では、東京ディズニーシーの象徴ともいえるセンター・オブ・ジ・アースが、なぜ380億円という巨額を必要としたのかを探っていきます。
第4章:2位 センター・オブ・ジ・アース ― 火山を背負う380億円の冒険
2001年、東京ディズニーシー開業と同時に登場したのが、センター・オブ・ジ・アースです。
地底を探検するライドとして知られるこのアトラクションは、東京ディズニーシーの象徴「プロメテウス火山」そのものを利用した巨大建築物の中に作られています。
その総工事費はおよそ380億円。当時としては、世界でも指折りのスケールを誇るアトラクションでした。
しかもこの金額には、火山全体の建築・耐震設計・人工地形の施工費などが含まれており、単なるライド設備を超えた“地形そのものの創造”に近い規模の投資です。
● 火山という“動く地形”を造る工事
プロメテウス火山は、標高約51メートル。パーク中央にそびえ立つ人工山として、内部は空洞構造になっています。
つまり、私たちが火山の外を見上げているとき、その内部ではライドが走り抜けているのです。
この「山全体をアトラクションにする」構造を実現するために、地下鉄建設にも用いられる強化コンクリート技術が採用されました。
火山内部には30メートルを超えるトンネルが張り巡らされ、地底湖・発光する鉱石・噴火口など、人工でありながら自然に見える地形表現が施されています。
これらの施工には、建築だけでなく地質・照明・造形・耐震の専門家が携わり、まさに「地形を設計する」レベルのプロジェクトとなりました。
● 噴火とライドを連動させる技術の裏側
センター・オブ・ジ・アースのクライマックスといえば、地底から地上へと突き抜ける“噴火シーン”。
ライドが火山口から飛び出す瞬間、実際に煙や光、振動が同期して発生します。
この演出は、単なる特殊効果ではなく、火山外壁に仕込まれたスチーム圧力装置と照明プログラムを連動させた精密な制御技術によって生み出されています。
火山の外観がリアルに見えるのは、この内部構造が“本当に呼吸している”ように作られているからです。
つまり380億円という費用は、アトラクションを「見せる」だけでなく、「火山という存在を生きさせる」ためのコストでもあります。
● 物語のベースにある“探検という感情構造”
センター・オブ・ジ・アースの原作は、ジュール・ヴェルヌの小説『地底旅行』。
地底の未知の世界を探検するというテーマは、ディズニーシー全体のコンセプト「冒険と発見の海」に直結しています。
アトラクション内では、静けさ→不安→驚き→解放という心理変化が計算されており、体験者の感情を物語の流れと同期させる構造が組み込まれています。
その緻密な感情設計こそ、ディズニーが“建設費ではなく構成費”として投資している部分なのです。
● 火山の耐震・安全設計が生む見えないコスト
プロメテウス火山は、東京湾岸の埋立地という特殊な地盤に建てられています。
そのため、火山全体には強化鉄骨と免震構造が採用され、震度6強の地震にも耐えられる設計です。
安全基準を満たしながら、“崩れそうで崩れないリアリティ”を表現することが、このプロジェクト最大の挑戦でした。
安全と演出を両立させる設計は、まさにディズニーの哲学「リアルよりもリアルに」そのものです。
● 2027年、「アースライズ」として再生へ
2027年、センター・オブ・ジ・アースは大規模リニューアルを迎える予定です。
一部では、新名称が「アースライズ」になるのではと報じられています。
改修費はおよそ560億円規模とされ、既存の火山構造を生かしながら新たな演出技術を導入予定。
つまり、かつての380億円の投資が“次の世代への資産”として再活用されるのです。
● 家族で挑む「恐怖と感動のバランス」
わが家がセンター・オブ・ジ・アースに挑戦したのは、長男が小学3年生のとき。
暗闇のトンネルを抜ける瞬間、彼の手が私の腕を強く握ってきました。
しかし地上に飛び出した瞬間、彼の顔は笑顔に変わり、「もう一回乗りたい!」と叫んでいました。
その表情を見たとき、私は“恐怖を越えた感動こそが投資の成果”だと感じました。
380億円の建築物の中で生まれる、その一瞬の感情。
それこそが、センター・オブ・ジ・アースが20年以上にわたり愛され続ける理由です。
次の第5章では、ついに1位──東京ディズニーランドの未来を象徴する新スペース・マウンテン(総投資560億円)の全貌に迫ります。
第5章:1位 スペース・マウンテン(新) ― 560億円の未来、再生されるトゥモローランド
そして第1位に輝くのは──東京ディズニーランドの象徴ともいえるスペース・マウンテンです。
1977年にアナハイムで初登場して以来、世界中のディズニーパークで愛されてきた名アトラクションが、2027年に向けて完全リニューアルされます。
オリエンタルランドが公式に発表した投資額は約560億円。これは東京ディズニーリゾート史上、単体プロジェクトとしては過去最大の金額です。
2024年7月31日をもって現行版がクローズし、約3年間の大規模工事を経て、新時代の「宇宙旅行体験」へと進化します。
● トゥモローランド再生プロジェクトの中心
今回のリニューアルは、アトラクション単体ではなく、トゥモローランド全体を“未来の広場”に再構築するというものです。
オリエンタルランドの公式資料によると、スペース・マウンテンの建て替えとともに、前面のプラザエリアを含めた空間整備が進められます。
これにより、「建物を新しくする」のではなく、“未来を感じる体験空間”そのものを作り直すというプロジェクトになっています。
560億円という金額のうち、かなりの割合がこの空間演出・照明・音響・構造物デザインに投じられていると考えられます。
● “宇宙旅行体験”を再定義する新ライドシステム
新スペース・マウンテンは、従来のローラーコースター要素を維持しながらも、最新の映像・音響・ライド連動技術を導入する見込みです。
内部では壁面が360度スクリーンとなり、宇宙空間の中をリアルタイムで走行しているような体験を実現。
さらに、乗車時の動きと映像が完全に同期することで、「無重力に近い浮遊感」を感じられるよう設計されています。
まさに、“宇宙にいる感覚”を建築とテクノロジーの融合で再構築しているのです。
● 建て替えが意味する“世代交代のデザイン”
現行のスペース・マウンテンは1983年の開園当初から続く人気アトラクションであり、多くのファンにとっては「思い出の場所」でもあります。
今回のリニューアルは、単なる改修ではなく、完全な建て替え。つまり、構造体そのものが一新されます。
そこには、「古いものを守る」のではなく、「次の世代に渡すために生まれ変わらせる」というディズニーの哲学があります。
560億円という金額は、過去を壊すための費用ではなく、“記憶を未来に翻訳するための投資”と言えるでしょう。
● 夜空を照らす光と音のショー ― 広場の新演出
リニューアル後のスペース・マウンテンでは、外観そのものが夜間ショーの演出装置として機能します。
外壁は光ファイバーによるイルミネーションとLEDラインが組み込まれ、音楽と連動して発光。
このショーはライドを待つ人だけでなく、トゥモローランド全体を包み込むように演出されると予想されています。
つまり、乗る人・見送る人・通り過ぎる人──誰もが“未来の一部”を感じられるように設計されるのです。
● 560億円の未来をどう感じ取るか
この巨額の投資の目的は、「驚かせること」ではありません。
それは、“人が未来を信じる感情”をもう一度取り戻すこと。
トゥモローランドというエリアの原点は、「希望としての未来」を体験させることにあります。
だからこそディズニーは、テクノロジーとデザインに惜しみなく投資し、“体験としての未来”を再定義しようとしているのです。
● 子どもたちに受け継がれる“夢の設計図”
わが家では、子どもたちがスペース・マウンテンに乗れる年齢になるのを、ずっと心待ちにしています。
新スペース・マウンテンがオープンする2027年、上の子は中学生、下の子は小学校高学年。
その年齢で見る“未来の光景”は、きっと今とは違って見えるでしょう。
私たち親にとっては懐かしさ、子どもたちにとっては新しさ。
560億円の中には、世代をつなぐ夢の設計図が描かれているのだと思います。
次の章では、こうした巨額の投資の裏にある「なぜディズニーはここまでお金をかけるのか」という哲学に迫ります。
第6章:なぜディズニーはここまで投資するのか ― 「工事費」の裏にある哲学
ディズニーのアトラクションは、しばしば「高すぎる」と言われます。
しかしその巨額の裏には、単なる豪華さや話題性ではない、明確な哲学があります。
それは、「お金ではなく、時間を投資する価値を作る」という思想です。
● ディズニーの投資は「建物」ではなく「体験時間」へ
一般的なテーマパークの建設費は、建物やライドの物理的コストに重点が置かれます。
しかしディズニーの工事費は、体験の前後──つまり「行列に並んでいる時間」や「アトラクションを出たあとの余韻」にまで配慮されて設計されています。
たとえば美女と野獣の村では、ライドに乗る前から物語が始まり、降りた後もショップやカフェで余韻を味わえる構造になっています。
これは、“1時間の感動を2時間の体験にする”ための投資です。
その延長線上に、「家族の思い出」という形でリターンが生まれるのです。
● 投資の指標は「滞在時間」
ディズニーは、アトラクションのROI(投資対効果)を「リピート率」や「客単価」だけで判断していません。
重視しているのは、ゲストがどれだけ長くそのエリアに滞在し、どれだけ長く夢の中にいられるかです。
たとえばセンター・オブ・ジ・アースでは、待機列からすでに探検のストーリーが始まり、通路ひとつにも演出があります。
滞在時間が長ければ長いほど、「非日常に浸る時間」も長くなり、満足度が自然に上がる。
そのために、待機エリアの岩肌ひとつにも本物のような質感を再現しているのです。
● 「費用対効果」ではなく「感動対効果」
ディズニーのプロジェクトマネージャーは、社内で「費用対効果」という言葉をあまり使いません。
代わりに用いられるのが、“感動対効果(Emotional ROI)”という概念です。
これは、費用に対してどれだけの“感情の波”を起こせるかを測るもの。
1回のライドで、何人が笑い、何人が涙を流し、何人が「もう一度来たい」と思うか。
この指標こそ、ディズニーが560億円を投じる理由の本質です。
● 「壊さないために壊す」再生の哲学
スペース・マウンテンの完全建て替えに象徴されるように、ディズニーは過去の名作を壊してでも再構築します。
それは「古いものが悪い」からではなく、“夢を持続させるための再生”だからです。
物理的な老朽化ではなく、体験としての鮮度を守る──それが、投資哲学の根幹にあります。
一度築いた世界観を維持するには、同じ場所に“新しい感動”を生み出す必要があるのです。
● 未来を信じるための投資
東京ディズニーリゾートの開発方針には、常に「長期的視点」があります。
たとえば、東京ディズニーシーのファンタジースプリングスは総投資額3,200億円。
その投資を10年、20年単位で回収することを前提に設計されています。
これは短期の利益ではなく、“次世代が夢を見続けられる環境”への投資。
親が子に「ここにまた行こう」と言い続けられる場所を作ることが、ディズニーが目指す最大の成果なのです。
● わが家が感じた“見えない投資”
私たち家族が感じるのは、アトラクションそのものよりも、“待っている時間”の心地よさです。
列の途中に風が通る場所があったり、日差しがやわらかく差し込む角度が計算されていたり──。
それらはすべて、「感情の負担を減らすための設計」です。
見えないところに費用をかけるからこそ、家族は一日を笑顔で終えられる。
その“静かな満足”こそが、ディズニーの本当のリターンなのだと思います。
次の最終章では、これまで見てきた金額の先にある「夢の設計図」としてのまとめをお届けします。
第7章:わが家が感じた「億の価値」 ― 家族ディズニーで見つけた投資の意味
ここまで見てきたように、ディズニーのアトラクションには、数百億円単位の工事費が投じられています。
けれども、私たちが現地で感じるのは「お金の大きさ」ではなく、“時間の満たされ方”です。
子どもたちとパークを歩いているとき、ふと立ち止まって写真を撮る瞬間や、並んでいる間に笑い合う会話。
そうした“間”の豊かさが、実は投資の成果なのだと感じます。
● 「高い」ではなく「深い」体験
一見すると、560億円・380億円・320億円という数字は、現実離れしています。
けれども現地で体験してみると、それは“高価”ではなく“深い”。
つまり、時間の層が厚い体験になっているのです。
スプラッシュ・マウンテンで滝を下るときの数秒、美女と野獣の舞踏シーンで音楽に包まれる数分、センター・オブ・ジ・アースで噴火口を抜ける数瞬──。
そのどれもが、長い時間をかけて設計され、緻密に“体験の記憶”を積み重ねています。
● 家族旅行が「投資」に変わる瞬間
わが家にとって、北海道からディズニーリゾートへ行くのは、年に一度の特別な旅です。
飛行機・ホテル・チケット代を含めれば、決して安くはありません。
それでも毎年訪れるのは、“心に残る再現性”があるからです。
同じ場所でも、子どもの成長によって見え方が変わり、感じ方が変わる。
つまり、ディズニーの体験は“繰り返すことで価値が増す投資”なのです。
アトラクションの巨額工事費は、私たち家族がその変化を味わえるように設計された“舞台装置”のようなもの。
そう考えると、数字が不思議と温かみを帯びて見えてきます。
● 「億の価値」は笑顔の数だけ存在する
560億円という数字は確かに大きい。けれども、その価値は分割され、訪れる人ひとりひとりの笑顔の中に分配されているのだと思います。
子どもが初めてスプラッシュ・マウンテンで声を上げて笑ったとき。
夜のパークで、家族で手をつなぎながら歩いたとき。
その一瞬の幸福に、何億円もの意味がある気がします。
ディズニーの“魔法”とは、金額ではなく、感情の再現性にあります。
どんな時代でも、どんな世代でも、その感情をもう一度取り戻せる場所であること。
それが「億の価値」を持つ理由です。
まとめ:数字の先にある「夢の設計図」
ディズニーのアトラクション総工事費ランキングを通して見えてきたのは、“数字では測れない価値”の存在です。
560億円のスペース・マウンテンも、380億円のセンター・オブ・ジ・アースも、320億円の美女と野獣も──。
その金額は「豪華さ」ではなく、「未来の体験」をデザインするための設計図なのです。
投資の目的は、来場者に一瞬の驚きを与えることではありません。
“また来たい”と思わせる感情を育てること。
ディズニーは、その感情を設計するために、空間・音・光・動線のすべてに投資を続けています。
だからこそ、数字を見て驚くだけではなく、次に訪れたときに「この壁の向こうにどんな想いが詰まっているのだろう」と感じてみてください。
それが、“夢の国の裏側”を少しだけ覗く、最も美しい方法です。
| 順位 | アトラクション名 | 工事費(推定) | 開業/予定年 |
|---|---|---|---|
| 1位 | スペース・マウンテン(新) | 約560億円 | 2027年予定 |
| 2位 | センター・オブ・ジ・アース | 約380億円 | 2001年 |
| 3位 | 美女と野獣“魔法のものがたり” | 約320億円 | 2020年 |
| 4位 | シュガー・ラッシュ(仮称) | 約290億円(推定) | 2026年以降 |
| 5位 | スプラッシュ・マウンテン | 約280億円 | 1992年 |
数字を見れば確かに桁外れ。
けれども、それぞれの億の中には、誰かの笑顔、誰かの初めての涙、誰かの「また来たい」という気持ちが詰まっています。
それが、ディズニーが“夢の国”と呼ばれ続ける本当の理由です。


